配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身又は一定期間、その建物に居住することができるようになります。被相続人が遺贈などによって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。
つまり、建物の所有権を取得するよりも低額な配偶者居住権を取得することにより、今までどおり建物に居住することができ、かつ、遺産分割時に配偶者の生活に必要な預貯金などの金銭をより多く取得できる可能性ができたのです。
婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産【居住用建物またはその敷地】の遺贈または贈与がされた場合、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
今までは、20年以上の婚姻期間のある夫婦間で居住用の不動産の贈与等があった場合、贈与税法上の優遇措置はありましたが、遺産分割においては、遺産の先渡しを受けたものとみなされ相続財産に持ち戻しの上、分割ということとなっておりました。
今回の規定で遺産の先渡しを受けたものとして取り扱う必要が無くなり、配偶者はより多くの財産を取得することができるようになります。
預貯金が遺産分割の対象となる場合、各相続人は、遺産分割が終わる前でも、一定の範囲で預貯金の払い戻しを受けることができるようになります。
従来、遺産である預貯金は遺産分割の対象外の財産であるとされていましたが、実務上の払い戻しは、金融機関によって、相続人全員の同意または遺産分割協議や、遺言によらなければ払い戻しができないことがほとんどでした。さらに、平成28年12月19日最高裁の決定で遺産分割の対象財産に含まれることとなり、各相続人単独での払い戻しが家庭裁判所の判断を得なければ不可能となっておりました。
今回の規定で、一定割合については家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口で支払いを受けられるようになります。つまり、葬儀や必要な生活費の範囲で払い戻しを受けられるということです。(上限有:1つの金融機関につき法定相続分の1/3の割合まで)
その他、仮払いの必要が認められる場合、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになります。
自筆証書遺言はすべて手書きで自書しなければなりませんでしたが、緩和により、財産目録についてはパソコンで作成したり預貯金の通帳のコピーを添付することも可能になりました。
但し、財産目録には署名押印が必要です。
また、1年半後から法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まり、公正証書遺言以外の方式でも相続手続きが便利になりそうです。(詳細は公表があり次第説明します)